ラファエロ展、面白かった。
いろんな切り口があると思うけど、
すずめ的には
かねてから、ビザンチンからルネッサンス、この時代について、ちょい、興味を持っていた要素。
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遠近法
反射光
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この二つなんだけど、ちょい、面白い部分、見つけた。
すずめ的には発見。
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これは、ラフェロの父の作品とされるキリスト。
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この、足、太腿の部分、見て欲しい。
右の太腿の下、反射光が入ってる。
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美大の予備校で、最初に習うテクニックがある。
それが反射光。
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以前も日記に書いたんだけど。。。
円柱を描く時、普通にグラデーションをつけて、こうする。
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まあ、円柱に見えるよね。
ところが。。。この一番暗い部分、そこには円柱の後ろの空間の光を拾った反射光があると言う。
その反射光を入れると、こうなる。
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ね。
うまいっ
って感じになるでしょ。
上の円柱よりか、断然リアル。
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それを描き方のオキテ風に言えば
「一番暗い部分の隣に明るい部分を描くべし」
っとなる。
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だけど、この反射光、本当に存在するのか。
後ろの空間は本当に反射光を作るほど明るいか。
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ぶっちゃけた話、
写真に撮った時、この反射光はいつもある訳ではない。
無い事の方が多い。
そこで、静物写真を撮るカメラマンは画面に入らないように後ろから小さな光を当てたり、
乱反射するようにコントロールしたり、ずばり、反射光を入れるために後ろに鏡で光を当てたりする。
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要するに、私たちがリアルだと感じる反射光の存在は、かなり概念的なもので、もしかして現実には無いもの、普通の人はほとんど見た事が無いものだとも言える。
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見た事が無いはずなのに、リアルってのも不思議でしょうがないんだけど。。。まあ、それはおいておいて。
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この反射光、ビザンチン美術の絵画には無い。
だけど、たとえば、ダビンチのほつれ髪の女にはある。
向かって左側の頬、本当は暗くなるはず。だけど、ほんのり、明るい。
これは肩の下か後ろの光を反射したもの。
この作品ではかなり分かり易い。意図的に入れたんだなと思える。
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でも、明確じゃ無いものが多いんだけど、
いくつかこの時代のものに、あれっ?っていうのがある。
暗い空間の中にある立体物の最も暗い側の輪郭は、黒い輪郭線で描くより、白っぽい輪郭線にした方が際立たせ易い。なので、いろいろ、これか〜?って思うものがあるものの、
この反射光の存在を本当に意識的に描いてるかというと、ちょい、疑問なものもある。
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ところが!
このラファエロの父
の大腿の反射光、これはばっちり!って感じ。
ここだけじゃなく、左(向かって右)の腰の輪郭。これもばっちり。
それだけじゃない。
このおとーさん、すごい。
膝から上は反射光が入っていて、
膝から下には入っていない。
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理屈から考えれば、膝下にも反射光はあっても不思議じゃない。だけど、こっちを無くすることによって、曲がった膝から上と下、距離感(この場合奥行き)が見える。これはすごいテクニックだ。
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この反射光をキーワードに今回の展覧会のラファエロを見てみよう。
かすかにあるものもあるけれど、
概ね、彼の作品には出て来ない。
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一カ所、見つけた。
持っているリンゴの右側の輪郭。
印刷画像だと グラデーションが死んでしまってて、うっすらとした明るい輪郭としか見えないけど、実際にはもっと、まさに反射光のように描かれている。
こっちの絵の暗い方の輪郭と比べると分かる。
こっちの絵の輪郭には反射光は無い。
(この作品はラファエロ、17歳の時のもの。さすが巨匠)
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さて、もう一度、おとーさんの作品を見てみよう。
死んでるキリストとは言え、その肉体は木の彫り物のようじゃないだろうか。
存在感はあるけど、死にたて?の人間の質感じゃ無い。
反射光のテクニックは、何にでも使えるワケじゃなく、過度に使うと、こうなる。
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では、ラファエロは反射光テクニックを知っていたんだろうか。
リンゴの光を見ると知ってたように見える。
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だけど、
17歳の作品、特に天使の顔、ここでは知らなかったかのように見える。
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時代的には父は知っていた。
だから息子である彼がそれを習うチャンスが無かったワケ無いだろう。(実際にはラファエロの父は彼が11歳の時に亡くなっており、直接習えなかったかもしれないが、ラファエロは父の工房の関係者に預けられてるんだから、テクニック的には共有できてるはず。。。少なくとも大人になるまでの間に学べたろう)
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だけどね、
反射光テクニックを知らなかったコが、
それを知ったら、
「おっ」って使いたくなっちゃうはず。
おとーさんのこのキリストの大腿は、まさにソレっぽい。
反射光の入れ方が得意げ。ちょい、オーバーコンシャス。
やりすぎて、木彫りの仏像風キリストさまになっちゃったくらい。
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17歳のラファエロ作品にはこれが全くない。
彼には反射光テクニックに出会うチャンスは無かったのか。
あったとしたら、大喜びで使っちゃう。。っていう作品は無かったのか。
今回の展覧会で見えたのは、このリンゴ位なんだけどね。
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さて、
じゃあ、この反射光テクニック、本当にすごいモンだろうか。
今回の目玉
大公の聖母子
これよりもびっくりなのは、
こっち。
このリアリティ。
無口な女
この服なんかのリアリティ、すごいよね。
だけど、ここには反射光は無い。
柔らかい布や
しっとり濡れたような肌の質感には、反射光は邪魔なのかもしれない。
ルネッサンスの巨匠の技には反射光テクニックなんていう小ワザは不要。
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ってワケでラファエロとーさんの反射光、コレはちょい、発見だった今回の展覧会。
ビザンチンには無い。
ルネッサンス前辺りから見え始めた反射光テクニック、
じゃあ、最初に使ったのは誰か?
もしかして、それが分かるかもしれない。
コネタのようで、実はちょい、奥が深い。
なぜなら、見えないものでも描いてやるぞという、
方法論的なワザ。
絵画のテクニックを抽象的な部分まで追い込んだリアリズム。
それが、いつ、生まれ、
紛れ込んで行ったのか。
その瞬間って、この頃、
まさに、ラファエロとーさんの頃だったのかもしれない。
な〜んていう
すずめ的発見。
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