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2011年11月23日 (水)

小児科医過労死裁判

ちょっと前、もしかしてみなさまご存知、
小児科医過労死裁判の結審に行って来ました。


っていう、ちょいレポート。


この日、入れるのは抽選。ってコトで、ちょっと早めに東京高裁に。
こーゆーの、結構、一人だけ外れたりするすずめです。
案の定、抽選番号は、13

でも、何人も外れたにも関わらず、ちゃんと、当たりました。
おほほ。やっぱり、日頃の行いでございますね。

ってコトで、真面目に裁判所見学。

判決の前、2分間ということで、撮影。
しーんとしてる傍聴席。

そして、判決文。
棄却

あっという間に閉廷でした。

実はこの後、上告が決まったので、
あんまし不用意なコトは言えないんだけど。

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この裁判、
小児科医中原敏郎さんの過労死を巡るものだった。
何人もの小児科医が辞めて、それでも夜間救急を維持するために、当直をこなした。
しかし、体力的に限界。彼は職場の高い塔から身を投げた。


このポスターの撮影に、その場所に行った。
隣は、中原氏の息子の通う高校があった。
この塔には何も無く、ただ、階段があるだけ。
ここを一歩一歩、登って行ったのだろう。何段もを登るうちに、思い返すこともできたろう。
その最も高い所に立った時、
見えたのは何なのか。学び舎や、運動場が見えたろう。早朝の人気の無いグラウンドに、愛する息子の影を追いながら、大きく息をしたのではないだろうか。

病院は住宅街の一角にある。当時から小児科は縮小されている中、ここでも、部長が辞め、人事に伴い中堅クラスが辞めた。加えて、産休を取る医師もいて、後任の部長となった中原医師にその重責が負わされる。補充をしようにも、なかなか見つからない。月に何回もの当直をこなしながら、それでも夜間救急を続けた。

子供は小さな大人では無い。
ある救急系小児科医さんがよく言う。
夜中に子供を連れて救急車で「病院」に行ってドクターが出て来ても、必ずしも小児科医が出て来るとは限らない。というより、小児科医がいる所など、全国でも稀ではないだろうか。赤ちゃんはすぐ熱を出す。昼も夜もおかまいなく。しかし、全国で、そういう子供を診る小児救急はどんどん絶滅しつつあった。
昨今、ニュースになっているが、昨日今日、始まったことではなく、中原医師が亡くなった7年前から、瀕死の状態だったワケだ。
少子化に加えて、経営の問題。小児科は効率が悪い。どんどん閉められて行く。


そんな中で、この塔の上まで追い立てられたのが、中原医師だった。


続きは明日。


写真のポスターは文、デザインともにすずめが制作いたしました。

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今回、判決が下されたのに先駆けて、労働災害を認めさせる裁判があった。
こちらは、勝訴。
中原医師の自死は、労災だと認められた。


この論点。
月に何回もこなし、連続32時間という労働になる夜間当直が、どれほどの負荷になるかということにあった。


反論:
32時間と言っても、夜間の当直は、ずっと起きていろというわけではない。もし、患者が来なければずっと寝ていられる。睡眠も「質」が大切であって、30分寝ても疲れが取れる場合もある。


実はすずめ、この反論に関して、人間工学会に研究を出したことがある。
もともと、デザインを検証する時、「疲れ」に関して、何のエビデンスも無いのが、不満だったのだ。良いデザインなら,疲れないはず。でも、疲れてるか疲れてないか...この場合の疲れは肉体的なものばかりではなく、精神的なものも大きい訳だが...それを計測する為の指針は、「疲れましたか?」という感覚による自己申告でしか無い。どうすれば、こういう反論に対して、論理的に反論できるだろうか。。。


すずめは、「睡眠時間帯」に注目した。
なぜなら、医師個人の労働に関するデータ。何も無いのだ。タイムカードも無く、その日の当番表だけ。
ここから、どれほどの事が証明できるか。。。。

すずめの論点

普通、人は規則正しい睡眠習慣がある。時差ぼけなどで、このリズムが狂うと、肉体的に大きな負荷がある。
この規則正しい睡眠時間が、どれほど侵害されているかという事を、数値で示すことはできないか。

中原医師は夜12時から朝7時までという睡眠習慣を持っている。これが、当直によって、どの位、侵害されているか。
当直の当番表、その日の患者の来院時刻から、夜中に何回起こされ、何時間拘束されたか。これを全睡眠時間からパーセンテージで表した。

えっと、今、手元にデータが無いので、忘れちゃったんだけど、かなりの割合で、それが侵害されていて、興味深かったのは、当直の回数が一番多かった月よりも、そうでないけれど、夜中じゅう起こされていたという日が何度もあった月の方が睡眠習慣は侵害されていた。

医師の過重労働が叫ばれる。でも、全員が全員、当直をすれば疲れるっていうのばかりでもないかもしれない。
たとえば、テレビのERなんかに出て来るような救命救急。夜中に大けがをした血だらけの人を手術しなければならないようなのと、寝ていることもできる当直、爆睡可能なもの。こういうのを十把一絡げでくくることはできないはず。だけど、同じように扱ってしまっている所に齟齬が出て来る。
反論したい派は、爆睡できるタイプ(季節にもよるだろうし)を引用して、「だって寝られるじゃん」とか、「ボクは毎日当直したって、元気いっぱい」って言える。
だから先ず、どれほど、大変なのか。それをきちんと、客観的にデータ収集するところから始めないとイケナイと思う。
その端緒として、「規則的睡眠習慣の阻害」っていう切り口の提案。
ってコトで、もしかして、コレに興味のあるヒトは、
個人メッセージくださいね。探せば、パワポと抄録はあるので、お送りします。


って、ハナシがズレたけど、ズレたまんまで、終って続きは明日。


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中原裁判。
イロイロあったけど、最終的には当たり前だけど、労災は認められた。


その公判の中で見たもの。

一つの職場の中で、人と人が、敵対するさま。
病院組織を相手に裁判を起こしているわけだ。中にいる職員にとって、中原医師側につくということは、勤め先を的に回すということでもあり、職員同士、軋轢も作る。
そんな中でも、味方について証言した人たちの誠実さ。すごいなと思う。
こちら側としては、そういう人たちに証言をお願いするだけで、彼等をその戦いの渦中にしてしまうことでもある。いろんな意味で、裁判とは、こんなに大変なものなのかと思う。


っていう事に、関わって、見えてきたもの。
小児救急のコンビニ化。

実は、ここ何年か、小児救急が閉じられてきている。このままでは子供たちの命が危ないと言われる。
本当は、そうであるなら、その部分がデータ化できないかと思った。
ここ何年か、小児救急が減って来た為に、どれほどの子供たちが危うくなっているか。

しかし、ある方にデータをいただいて驚いた。

小児救急受診者のうち、4%が入院適応に過ぎない。
また、厚生労働省の人口動態統計では、一刻を争う不慮の事故死者は
0歳149人、1-4歳278人、5-9歳207人、10-14歳149人と
小児救急医療施設への距離により人命の危険性を議論するほど事故死者が
多くないのが実情。

これでは、データにはできない。
どころか。。。小児救急など無くても、子供たちは死なない?

そういえば、何年も前に東北地方で夜中じゅうたらい回しにされた上、亡くなった例。
ちょっと釈然としない部分もあった。あれを普遍化させていいのか。

もちろん、だからと言って、夜中じゅう高熱にうなされる赤ちゃんを抱きしめながら朝を待つお母さんがいる。こんなに豊かな国に住みながら、そんな最低限のインフラも無いのか。。。
本当は、畑の真ん中に忽然と現れる宮殿のような温泉施設や人っ子一人渡る人もいない、狸の為の橋なんかより、ずっとずっと切望されているはずなのに。

今も尚、日本中に、中原医師はいて、今も尚、自らの命をすり減らして、子供たちを守っている。

こんなこと、一人一人の誠実さや献身じゃどうにもなる問題じゃない。
でも、無策のなか、日本中の中原医師が孤独にがんばるしか、無い。

こんな事でいいのか。

ようやく国は医師を増やす方向で動き始めた。
でも、今から医学部の定員を増やしても、卒業するのは6年後。実戦力になるのは10年後。それまでを私たちはどう、しのいだら良いのか。
それに、彼等がみんな小児科や産科、その他渇望されている所で働いてくれるとは限らない。それに関してはまだ何も見えて来ない。

っというコトで続きは明日


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っていうような事情の中。

裁判の後、弁護団のE弁護士とタクシーでご一緒した。
「裁判の後の説明、もっとメディアに分かりやすく言うべきだよね。」
賛成!

今回の結果、「敗訴」っていうわけだが。。。
そして、それに関してはいろいろ記者会見で言われた通りだけれど。
何か、歯切れが悪い。医療に興味も危機感も持っていない一般人はどう、解釈してるだろうか。

今回の結果。
敗訴なのだが、
判決文ではきちんと過重労働は認めている。
これは勝利だ。

E弁護士は反省会(別の言葉で飲み会とも言う)を取材するカメラに向かっておっしゃった。

すずめも賛成!
だって、今回の裁判で、我々は社会に、小児科医の過重労働について、大きな渦を巻き起こすことができた。
判決の日、傍聴席は抽選。その多くは、我々を見に来たメディアだ。

8年前はまだ、医療に危機感を感じる人なんて少なかった。
記事になっても、社会欄の角に、小さく書かれるだけ。
でも、今、医療の問題、
救急医療の危機、
新聞のトップにもなる。
ちょうどこの日、一人の妊婦さんが、受け入れ拒否で命を落とした。
大都会東京。救急医療の不備が叫ばれ、いろんな方策を取って尚、たった一台のベッドが空けられなかった。

空ける余力の無い医療現場。余力どころか、労働者としての健康を守る事すら難しそうだ。

32時間労働で、ミスをするなというのはおかしい。
ミスをしてはいけないし、32時間労働だからミスをするのは当然だというのは間違っているだろう。
ミスは犯罪ともなる。しかし、そもそも、32時間労働をさせることが犯罪なのだ。
今まで見てみぬふりをしてきた世間も、もう、それじゃやっていけない事をやっと認めて、向き合おうとしつつある。
これはこの裁判の大きな勝利だろう。

これはすずめの個人的解釈だが、
今回、認められなかったのは、彼等のマネジメント能力で、中原医師の心の問題、鬱病を発症していること、そして、ここまで追い込まれている事を、察知して、対応することができたかどうか。
それに対して、当時の病院経営陣にはできなかったろうというものだった。
10年前であっても、もし、これが、トヨタや他の企業だったら、こんな労務管理は許されない。しかし、8年前の病院で、そこまでの管理能力があったかどうか。まあ、しょうがないか。。。っと言う所なのだろう。

労務管理としてどうか。
その部分は認められなかった。
だけど、死に追いこんだのは過重労働である。という点は認めている。

これは、決して、「負け」ではない。
社会的「勝利」を勝ち取ったのは天国にいる中原医師だった。
彼が訴えたかったこと、世間は今、その問題と対峙している。


何日か後、
やはり上告することが決定した。


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2008年の日記の転載

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