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2011年11月23日 (水)

企業の誠実さ

すずめの思い出話

昔のコトなのでまあ、話してもいいかなと思う。


どんな製品でも事故はある。
それを私たちは、どんなに誠実に受け止めてきたか。

企業はお金儲けのためにある。お金儲けをすることを、許されている。
しかし、それは責任と引き換えに得ているもの。だから、自らの製品に対して責任を持つ。

そんな当たり前の事を疑う人がいる。
彼等は企業が、今まで、どんなに誠実に消費者の事を考えてきたか、知らないのだ。

さて、その歯車のひとつのデザイナとして、見た話。

ある日、営業部の人が持って来た記事。
すずめが担当した商品とおぼしきものが載っている。
社名も製品名もぼかして書いてあって、はっきりはしないが、この記事を書いた読売新聞から取材があったそう。
内容は、本当はそうやってはいけないと明記してあり、どう考えても非常識で普通はやらなさそうなコトをやっている。その結果、皮膚炎。それも小さなものらしい。
しかし、会社は全商品回収に決めた。後で、聞いた話。この読売に訴えた人、その手の事が趣味で今まで何度もこういうことがあったという。しかしそんなことは、商品の問題とは関係ない。営業部長をはじめ、重役が謝りに行ったそうだ。
実はこの商品、大ヒットしたものだった。100万個の中の1件。これからもまだまだ売れる商品だ。しかし、こういった部分で瑕疵があるとすると、製品的には改良のしようがない。(もちろん、パッケージには大きく注意が書いてあるが、やってしまうことは防げないのだ)結果、回収、撤退。その後は他の小さな会社が真似をした商品を売っていた。もし、この会社の規模が小さかったら、ここまでの対応はしなかっただろう。上で「責任」と書いたが、それには目先のものだけでなく、市場の中でのリーディングカンパニーとしての「責任」もあるのだ。

すごい会社だと思った。みんなは淡々としていた。新聞に載ったんだもん、しょうがないよ。
企業は信用が第一だ。こんなことで、その信用を落としてはいけない。そんなの、当たり前のことなのだ。こういうことの積み重ねが、企業や業界の信用を作って行く。



ある日、名古屋だったか,消費者センターから「お手紙」が来た。
オーバーパッケージだという。
消費者センターには地域のいろんなクレーム情報が寄せられる。それをひとつひとつ分析し、どうするか、決められる。

商品が小さいのに、こんな大きな箱に入れるとはけしからんというものだった。みんなが言う。もし、消費者センターが納得しなかったら、大きな部屋の真ん中に座らせられて、周りをコワイおばさんがぐるりと囲んで、「糾弾」されるんだゾ。(たぶん、ウソです)
。。。っというワケで、弁明を書いた。「この商品は小さいけれど、高額。箱を小さくすると、店頭で万引きの標的にされるため、大きくせざるを得なかった....云々」
納得してもらえたのか、名古屋には行かないで済んだ。

各地の消費者センター(この場合は名古屋)は地域の消費者からの膨大な情報から、選択し、検討する。
ちなみにこれは国民生活センター(当時は通産省の内部)の下部組織だ。こういう所で調べられ、問題有りとなったら、いろんな所へ情報が上げられ、様々な商品テストなどを含む調査をされた上、最後には国から問題が公開されてしまう。このレベルから国の公開までにはまだまだ何段階もあり、また、時間も相当かかる。(たまに、あまりに危険に深刻なものがある場合は、それが省略され、早く公開される事もあるが。)
国民生活センターからは突然、情報公開がされるわけではない。内々にこういうやり取りがあり、企業は適宜改善していく。それが充分ではないと言う時に、初めて上へ上げられ、更に検討され、最終的には公開されてしまう。もう、そこまで行ったらアウト。普通はもっと前の状態で解決するのだ。


これは、お客様サービスから入ったもの。
火傷だった。小さなもので、軽かったそうだが。
新聞に出る前に、こうやって伝えてくれたことは大感謝。
社長や重役が謝罪に行った。

すずめたちは、今回の事故を繰り返さないためにどうすればいいか。
頭をしぼった。
この商品には数々の注意事項がある。説明書にはそのあらゆる可能性に対して明記している。しかしそんなものは読まないということで、パッケージにはその中で特に重要なものを3項目に限って、大きく表記していた。もちろん、今回の事故を誘発した「やってはいけないこと」は第一項目に書いてあった。
しかし、それ位では事故は防げなかった。3項目の中で「怪我」に連結するのは、この1項目だ。重要な部分を他のといかに別に強調できるかがポイントなのだ。

この「やってはいけないこと」をするのはどういう時か。その時、商品のセット内容のうち、どれを操作しているか。その部品に警告シールを入れることにした。
それも「1度に1回分!」と大きく書き、下に小さく「一度に入れる分量は一回分にしてください」と。60ポイントの巨大な文字。さすがに、これが見えない人はいないはず。文章にすると、どんなに大きな文字でも読まない人がいる。また認知科学的に、人が一瞥で読めるのは数文字。(そんなことは当時は知らなかったが、デザイナは感覚的にやっていた)だからメインの文字は6文字にし、分からないかもしれないので、下に補足を入れた。


謝罪の後、お客様に今後の改良点を報告に行った。
反応は良かったようだった。自分たちも悪かったことだしと。生産中止までは要求されなかった。
しかし、小さな火傷だとはいえ、こんな事故を起こした商品は長くやってはいけない。間もなく生産を中止した。かなりのヒット商品だったし、デザイン目立ってたんだけど。


これは、大昔の話だ。これよりもっと昔から、ずっとやってきた一般的な対応にすぎない。もちろん,今も。
どれもささやかな事故。
しかし、こういう小さな積み重ねを企業は日々、行っている。
特別なことじゃなく、どこの会社も普通に。
もっと何億もかけた大きな対策もある。

でも、こういうささやかな積み重ねが、
今の日本の産業を作っている。
だから、私たちの商品は、
世界に出して恥ずかしく無いレベルなのだ。

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