« ロービジョンとあかちゃん | トップページ | 文学とユーザビリティ »

2011年11月17日 (木)

救急の研修 /時代を変えてきた人


すずめは、ユニバーサルデザインについて、その「次」があると思っています。
その「次」は、ユニバーサルな配慮は、とりたてて言うまでもない、単なるアクセシビリティの問題。でも、ある方向性に持っていくと、結局は「命」というキーワードにたどり着く気がします。

平たく言えば、
誰でも、子供でも、高齢者でも、
歩けなくても、見えなくても、
すずめみたく、ぼーっとしてても。
命は守られる社会。
その形がスロープであり、ホームドアであり、人は誰もが人を助けるスキルを持っている社会。


なので、ずっと、そのテーマに興味があるんですが。。。
そんな中、ちょっとだけ、関わった問題の話、古くならないうちに。
実はちょっと前というか、3月6日の直後に書いた物なんだけど。。。何となく、文字のこと、書いちゃってたんで、載せ損なっていました。

-------


http://www.evanam.jp/izm/index.html

ちょっと前、こんなニュースが流れた。


市立札幌病院事件 罰金6万円の一審判決を支持 札幌高裁
 歯科医師の救急研修 必要性は認定

------

早速、支援する友人に連絡すると、即日上告したとのこと。

この話、あまり有名じゃないかもしれない。判決、上告のことも、すずめがパタパタしても、検索では、もうニュースとして拾えなかった。(あったら、教えてください)
でも、こんな風に戦って、今の時代を変えて来た人がいる。そんな軌跡を思わせてくれる問題だ。

事件の詳細は上記のHPにあるが、


------(引用)

市立札幌病院救命救急センターで研修中の歯科医師(口腔外科医)に資格外の医療行為をさせたなどとして、医師法17条(医師以外の医業の禁止)違反の罪に問われた元センター部長の医師、松原泉被告(57)の控訴審判で、札幌高裁は6日、罰金6万円を言い渡した一審判決を支持。被告側の控訴を棄却した。

------

昔は、歯科医師は、麻酔や救命救急での研修は受けては「いけない」ことになっていた。


これは、すずめ的解釈だが。。。歯科医師には研修を受ける能力が無いのではなく、単に制度の問題であったろうと思う。なぜなら、この後、実際に研修が合法となったから。
平成15年、厚労省から正式に研修のガイドラインが全国に発せられた。これは松原医師をはじめ、多くのこの問題に危機感を持つ人々の活動の成果であるというのは、異論が無いだろう。


HPにはこういう風に書いてある。

------(引用)

(救命救急には)外傷、心肺停止をはじめあらゆる疾患の患者が搬入されています。口腔外科領域では顔面骨骨折、顔面口腔内裂傷単独から、顔面を含む外傷多発骨折までと様々で、整形外科、形成外科と同時に手術することもあります。

------

それなのに、歯科医師だけが、研修を受けると「違法」だったのだ。
何に照らして違法かというと、昭和23年!にできた医師法。
もともとこれは、歯科医師が「市立札幌病院の研修医公募に応募し、麻酔科と救命救急センターでの研修を求めた」ところから、始まっている。そして、「市立札幌病院側では、副院長以下各部長で構成されているレジデント教育委員会で協議し、まず麻酔科での歯科研修医受け入れを承認」。
もし、法律に照らすなら、この時点で、違法なのかどうか、考えられるべきだったのかもしれない。(当然、考えられていた)そして麻酔科と救命救急センターにおいて1年間の研修。
法律が間違っていたのかどうかは、すずめには分からない。しかし、アーギュメントがあったのは、確か。変えるのか、存続させるのか建設的議論が「早急に」されるべきだったろう。しかし、誰もが想像出来る通り、そんなの、日本の国が簡単に動くワケがない。だからこそ、半世紀を超えても変わらないのだ。でも、問題は命に関わること。変わるまで待つ間に、犠牲者が出ないとも限らない。

実際、救命救急の口腔外科とまで言わなくても、私たちも歯科へいくと、麻酔をかけられる。もし、何かあった時、私たちはどうなるのだろう。。。?そういう不安、非現実なものじゃない気がする。

裁判で検察側は「歯科医師は歯を見るのが職務であり、医療の無資格者。医療行為を習得する研修を受ける必要性はない。患者の急変があっても、救急医に引き継ぐまでの間、救命処置をすれば足りる」
としたが、裁判長は「歯科医師が緊急事態に対処する能力を身につけるために救急研修は必要」と認定した。
その上で、研修をさせた松原医師の行為は「違法」となった。

(すずめは素人なので、詳しくは、上記URLをご覧ください)


さて、この判決が正しいのかそうじゃないのか、その件に関しては触れないで、考えてみたい。

歯科医師は、救命救急の口腔外科で、麻酔をかけた手術を担当することもある。のみならず、歯科の麻酔は、街の診療所でも、子供にも、高齢者にも使われる。にもかかわらず、勉強することは違法。
しかし、それではもしもの事があった場合、危険。(ちなみに、AEDの救命士の指示無し使用が認められたのは、2003年。ってコトは、この前は、もし、麻酔で心肺停止になって、歯科医が救急車を呼んでも、病院に着くまでは、除細動ナシっていう時代。)
そんな懸念はあっても当然だろう。「もし」この時代、松原医師、その他、何人もの人々が、この命の関わる懸念に対して、方策をとる事を実行していたら、
それは違法。でも、知りつつ、やっていた人たちがいる。


社会はこうやって、変えられてきたのではないだろうか。

変える挑戦、どんな分野でもなかなか現場の人間が行うのは難しい。時間的にも、立場的にも。
政界に討って出る医療者、政治運動をする医師、ロビー活動に精を出す市民運動家。そういう形で合法的に「変える」のは正しいだろう。だが、松原医師のような「挑戦」はどうなのだろう。
やはり、それを社会は否定するべきなのか。


松原医師の、争っている金額は「6万円」。
この6万を楯に、最高裁まで行く。
すでに、市民病院を辞めた彼は別に名誉を争っているのではないだろう。
本当に、争っているのは何なのだろう。
医療をめぐる、社会の「勇気」のあり方ではないだろうか。
そんな事を考えさせてくれる。


------


実は、もうひとつ、この問題、すずめ的に面白い視点がある。
訴えたのは、「札幌市」で、訴えられたのは「市民病院」の職員である松原医師。
内部告発。そっかー。

|

« ロービジョンとあかちゃん | トップページ | 文学とユーザビリティ »

医療」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1210811/43044532

この記事へのトラックバック一覧です: 救急の研修 /時代を変えてきた人:

« ロービジョンとあかちゃん | トップページ | 文学とユーザビリティ »