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2011年11月10日 (木)

病院のミス、ユニバーサル。。。?

タイトルを見て、ついフラフラ来た人もいる?


昨日の日記に書いた、視力の迷信については、ながーーーいハナシがあるので、また別の日に。
病院の話、ユニバーサルデザインのテーマとちょっと離れて感じちゃいますが。。。
実は、すずめの持論の一番の「核」は、「ユニバーサルデザインの次のステージは危機管理」なんです。っていう意味での、病院ネタ。
だけど、その話は長いのでとりあえず、「例」として漠然と語りましょう。

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一昨日のM病院。
褒めちぎったが、いろいろ面白い部分もあった。


ICUを見せていただいた時、その薬の棚に唖然とした。何十年も前に作ったのだろうか。木製の細かい棚に薬がずらりと並べられている。たとえば、小さな薬瓶の径はせいぜい、2センチ?1こま3センチ、縦7、8段、横に20列?100種類を超すような薬(おぼろな記憶で、数は数えていない)がずらりと並べられているのだ。そのひとつひとつのコマに小さな紙が貼ってあり、手書きで細かい名前が書いてある。
「これ、大丈夫なんですか?」
「はい。今はダブルチェックしていますから。」
と、明るい声が帰ってきた。
私の書き方を見て、多くの人が、仰天されていると思うが、職場とは多かれ少なかれ、そういう要素が有ると思う。こんなのはめちゃくちゃだと、外からは思えても、中に入っていると、それが当たり前であったりするのだ。もちろん、日々、研鑽を積んでいるわけだから、外部の人間とはその扱いに対するスキルは大きく違う。素人が簡単には言えないだろう。すべての職業の現場が、素人から見て、単純明快であるべき、とは思わない。
しかし、そこに落とし穴があるのも確かだ。
確かに2度チェックすれば、一度より確実になるだろう。しかし、「これは赤だ」と2度チェックしても、「赤」が間違っていたら100回やっても意味が無い。そこに「ダブルチェック」の落とし穴がある。こんなに複雑でも、2度チェックすれば、大丈夫だと思わせてしまう。

さて、では、どうすればいいのか。
こういうのを批判しても始まらない。どうすれば、問題点を見つけられるのか。
聞き方を変えてみた。
「他の病棟から配置換えになった人はどうですか?」
「そうですね。慣れるまでに1ヶ月はかかりますね。」
「たとえば、どういう所が難しいんですか?」
スタッフは薬を調合する台を見せてくれた。上から調合の仕方、配合の割合を書いたシートが何枚もぶら下がっている。
薬は薬剤部で一括管理され、もちろんそこで調合されるのが、原則だが、ICUでは点滴薬など、こうやって薄めたりするのだという。その薬が入っているいくつものワゴンを見せてくれた。同じようなパック(シャンプーの詰め替え用のパッケージを想像して欲しい。ただし、シャンプーのパッケージはカラフルだが、銀色に薬剤名など文字が列挙しているだけだ)が4、5種類ずつだろうか、一つのワゴンに入っている。どれも同じようだ。名前も酷似したものが多い。同じ薬でも濃度のバリエーションの違いもある。だから、同じようなパッケージを間違わないように、ワゴンを変えたりしているという。
ふと、Nさんの広尾事件のことが頭をよぎった。
ICUのメインの業務は薬の調合ではない。調合の途中で、どうしても手を離さなければならなかったら?このワゴンの一つが隣で作業する人と入れ替わったら?そんなことが、あり得るのは、スタッフの人たちは十分承知であると思う。しかし、そんな事で間違えないように、自分自身の神経をすり減らして、注意深く作業しているのだ。

こういうミスに関して、いろいろな調査がある。
が、漠然と、「大丈夫ですか?」と聞いたのでは、問題点は浮かび上がってこない。
質問の仕方が大切。
これは、広告の調査でも昔からよく言われることだ。「好きなインスタントラーメンは何ですか?」では「人気のあるラーメン」の答えは出て来ない。「何でもいいから、『知ってるラーメン』の名前を上げて下さい」
何でも良いということは、キライなものも含まれるのだが、大勢に聞くと、「売れているラーメン」のデータと符号するのだ。聞き方はとても重要だ。

医療現場ではどうなのだろうか。

やはり、弱者の視点は重要ではないだろうか。
「新入り」に業務を説明するには、どうしたらいいか。どこを間違えたら大変か。実際に新人が疑問に思うのは、何か。そういうのを考えると、ベテランがふとした拍子にやってしまうミスの正体も分かってくるのではないだろうか。内側の視点ではなく、外からの視点は大きなヒントになるのではと思う。


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一昨日の話の続き。
こういう視点で、ちょっとした事に関わったことがある。
ある巨大で、事故で有名になってしまった病院(言えないので、勝手に想像してください。そう、それです)
そこで、ワーキンググループというか、ミスを回避するためのプロジェクトが組まれた。主な参加者は現場の看護師さんたち。ここへリーダーとして、招かれたのは、R氏。(イニシャルはでたらめです)原発の危機管理の専門家だ。そこで、ちょっとお手伝いをさせていただいていた。

よく、いろいろな所で、医療事故のシンポジウムがある。そういう所で最後に、まとめの所で、必ず出てくる話。
「では、これを繰り返さない為には、どういう方策がありますか?」
「やはり、教育だと思います。事故を起こさない、隠蔽しない教育。」
こういうコメントにはいつも疑問を感じてきた。確かに昔は「謝ってはいけない」と、隠蔽すべしというような教育がされてきたのだろう。しかし、それを「正直に言いなさい」という「教育」がされたとして、どういう効果があるのだろうか。。。。というのはともかく。
もうひとつの「事故を起こさないような教育」というのは、どういうものなのだろう。
私たちは、複雑で高度なテクニックを学ぶ。しかし、間違う時には、3x2=5 のような間違いをするのだ。そして、同じ方法で何回チェックしても、「方法」が間違っていたら、間違いは発見できない。こんなこと、教育で、どう、解決できるのだろう。
抽象的な理想論をいくら重ねても、何も変わらない。誰も、ミスなどしようと思ってやるヤツはいないのだ。それに「具体的に」どう、迫れるかだろう。

産業界では、「不良」や「ミス」は当たり前で、大前提だ。だから、生産ラインの中にもチェックが組み込まれたり、出荷後にも、「サービスセンター」が対応するシステムが作られている。企業のそういう仕組みが機能しない場合は、「国民生活センター」や消費者団体がストッパーにもなる。設計そのものに、フールプルーフが組み入れられ、重篤な事故を引き起こしそうなものは販売されない。もしくは、規制がかけられる。ユニバーサルデザインのコアな概念の一つがこのフールプルーフでもある。
このすべてが、とても具体的且つ実践的だ。たとえば、ピクトグラムで警告するならば、その天地サイズや色、位置など詳細に規定される。こういった産業界の具体的なマインド、もっと医療の中で生かせないものだろうか。


話を最初にもどすと。。。

R氏はこの産業界の方法で、病院の中を洗い出していった。一つ、一つ細かく。たとえば、全員で病院中を回り、不備を指定しあった。中にいて慣れてしまっていたら分からない、他の部門の同僚の眼でチェックするのだ。

投薬の時のエラー回避についても、いろいろ具体的に問題点を洗い出していった。
どういう項目をチェックしなければならないか。5つにしぼって、それを指折りで、必ずチェックすることを提案した。
たとえば、名前、容量、。。。一つチェックするごとに、指を折る。
単純な事のように見えるが、「身体」が覚えることは大きいのだろう。
よく、電車などでも、「指差し確認」のような事をやっているのを見かける。頭だけではなく、「身体」の動作として、身体に覚え込ませる。これは、生身の人間は、ミスをするのがあたりまえ。だからこそ、ロボットのように、「自動」で動くように、身体を改造するのだ。

R氏の一番の持論。
「人間はエラーをする。だから、できるかぎり、人間を介在させないことによって、エラーを回避する」
システムとしてのフールプルーフだ。原発の安全の根幹もここにある。(それでもなお、問題はあるのだろうが)


「ミスを起こさないような教育」というのは、何を指しているのか、分からない。薬害の裁判でも「過ちを繰り返さない約束をしろ」というのが盛りこまれる。その言葉は正しいのだろう。多くの人はそういう美しい言葉で納得してしまう。逆に言うと何て便利なのだろうと思う。
しかし、本当に、エラーを防ぐのにはもっと、別の、具体的なアプローチが必要だ。そういう具体性の無い「言葉」は机上の空論だろう。そんなものに、納得するから、無用の、ばかばかしい慣習がまた一つ、加わってしまう。無用ならまだいい。現場の人間には「有害」な物すらある。ミスを防ぎたかったら、すべてにいちいち患者自己責任の念書をとればいい?薬害が怖ければ今後新薬を許可しなければいい?


「すべてのものにエラーはある。」
しかし、医療に関してだけ、「無い」というのが前提になっている。これが大きな間違いだろう。産業界はすべてに「エラーがある」が前提であるから、その回避のシステムができてきたが、「無い」が前提だと作りようがない。結局、「許す」「許さない」というような、感情論になっていく。

まず、そこから変えていくべきではないだろうか。
R氏とのプロジェクト、そのうち、何かの形で、外からも閲覧できるようになると思うのだが。。。

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