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2011年8月27日 (土)

ザ 電力自由化

2020年、8月27日、10:38 pm 、銀座 高級クラブ


広域暴力団白菱会長、三木はチンピラと会っていた。
チンピラの名前は須加。
「あの時の電力自由化には、君たちの貢献は大きかったと思うよ。」

10年前、福島原発事故の後、世論は東電と国へのバッシングで沸きかえっていた。おりしもソーシャルネットワークの黎明期。普通の人々が、いろんな書き込みをし、社会問題などにも言及をし始めた頃。皆、盛んに原発ネタでもりあがっていた。
そんな中、罵倒派と呼ばれる一団が反原発を唱えていた。
彼らは、罵倒や罵声、そのほかあらゆる不快な言葉をかき集めて、原発推進派を叩いていた。とは言うものの、事故直後、推進派なんてほとんどおらず、彼らが敵にしていたのは、普通の人々。もともと、事故にびっくりして世論の尻馬に乗っただけであり、殆ど知識などを持ち合わせていない彼らの論には突っ込みどころ満載。そういう部分を指摘する人間を仮想の敵に仕立てて攻撃していたにすぎないのだが、炎上ほど見物人を集められるものも無い。アピール度抜群だった。
そんな流れの中で、主張されていたのが、電力自由化であった。
もともと政治の中で長年くすぶって来たものだ。郵政民営化を果たした小泉政権時でさえ、「郵政の次に、電気や水道、ガスまで自由化されたらたまんない!」という論があり、実現しなかった。
ところが、ネット罵倒派たちの大暴れによって、いつのまにか、電力は自由化すれば魔法のようにすべて解決する!というような勘違いが生まれてしまった。結果、電力はすべて、市場経済にゆだねられることになった。


三木はこの自由化の直後、青森県大間町の建設中の原発を買い取った。
当時大間原発は、翌年2012年3月に完成予定。原発事故以後、工事は凍結していた。
三木は暴力団系資金を集め、新会社「三木開発」を創設。にっちもさっちもいかず、持て余されていたのを当時の電源開発株式会社から買い取ったのだ。二束三文だった。
翌年、会長に就任した三木は、
「この原発は稼動させない!そのために買い取った!」と世間にアピール。
ネットでは、多くの陶酔者が現れた。仕組んだのは須賀たちだった
三木はヤクザだと通っていたので、本当はこのスタンドプレーに危機感を持つ者もいた。しかし、須賀たちが罵倒派の子分を使って、反対者をつぶしていき、ヒーローに仕立てて行ったのだった。彼らは自分たちが正義の味方だと信じている。どこまでもがんばった。ストーカーなどの犯罪まで手を染めるものさえいた。

そして、10年。
日本の電力は完全に自由化していた。とは言っても、表面的にはそんなにドラスティックな変化があったわけではない。過疎の村に電気が流れなくなったことぐらいであろうか。

ワイングラスを傾けながら、三木はニヤリと笑った。
「さて、本番はこれからだ。君たちにも、活躍してもらいたい。」
「はい、喜んで!光栄ですっ。」


次の日、新聞の片隅に小さな記事が載った。「三木開発倒産 会社更生法適用」


三木開発本社の社長室。彼は新しい名刺を見ていた。
「強翼炉・燃料開発事業団」会長
「待ってたんだよね。」
彼は傍らにいるペットの猿に話しかけた。


2021年、8月28日、10:38am 青森県 大間

すがすがしい風が吹いていた。
目の前には三木好みのデザインの原発。
真っ黒に、やくざの家紋。
建屋には刺青風の龍のデザイン。職員は全員、銀座のクラブからスカウトしてきたホステス。和服も水着姿もいる。 内装も銀座のクラブを模した。
別に事故さえ起こらなければ、素人だって良いのだ。 すべて自動化されており、ニンゲンは不要なのだから。

大間原発を買い取ってから9年後の去年、 三木は工事中だったプラントを突貫工事で仕上げてしまった。何しろ、自由経済だ。五月蝿く言うヤツなんていない。安全基準なんてあったって、工事の間中、ずっと見てるワケじゃないのだ。逃げ道はいっぱい。とにかく、安く上げればそれだけ儲かるんだから、こっちだってやりがいがあるってモンだ。
もちろん、いくら自由化されたとは言え、原発を最初から建てるのは大変だ。だけど、大間は許諾どころか、すべてが済み、後は仕上げだけという状態だった。

人は皆、考えることは同じ。今年中に15機、来年度に7機、新設炉の稼働が始まる。どれも福島事故の後に売却されたものだ。
何しろ、電力産業の利潤は莫大だ。昔は国ががんじがらめにしていたが、今はすべてが自由。もちろん、安全基準はある。だけど、役人は24時間ついてるワケじゃない。抜け道はいっぱいある。これほどうまい商売は無い。


福島事故から10年。日本は結局、電力を火力に依存するしかなかった。当初は自然エネルギーを推進などといわれていたが、自由経済では採算が合わない。建設費も高く、クリーンエネルギーを推進しようなんていう酔狂な事業家は現れなかった。それが市場経済の限界なのだ。

それでも最初の5年は良かった。そこそこ化石燃料の国際価格が安定していたから。ところがこの数年、石油が高騰。電気代はどんどん上がっていく。じゃあ、自国内の天然ガスだの他に無いのか。。。という話になっても、開発ができるような力のある企業なんて無い。 そんな開発してたんじゃ、採算合わない。
消費者は日々変る電力料金に汲々としながら、しかし呑むしかなかった。

そんな中で生まれた「強翼炉・燃料開発事業団」。
ココの販売する原発は、KWh あたり5円。
激安だ。
かつての東京電力当時は7円と言われていたが、それよりも安い。
「東電はへたくそだったんだよ、竜クン。」
三木は肩の上の猿に言った。
あんなに叩かれたが、東電は高レベル廃棄物やら、安全対策やら、莫大な金額をかけていた。今はそんなもの、不要だ。廃棄物なんて、将来、溜まったら、また倒産させれば良い。事故が起こっても同様。何しろ、自由経済なのだ。何でもアリ。しばらくやったら、株ゲームをしても儲かるかもしれない。強翼炉・燃料開発事業団の夢は果てしない。

ネットではこれに気付いた者たちが、書き込みを始めた。
須加たちは、子分に命じて、罵倒劇を仕組む。
「まったく、ハサミも馬鹿も、使いようだ。」
ペットの猿がにっこり笑った。

参考:
読み方 
須加 すか
強翼 ごうよく

登場人物やネタに思い当たるモノがあるって?
あ、あなたの勘違いですから。

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